エストロゲン・プロゲステロンによる抗老化作用
卵巣で産生されるホルモンのひとつであるエストロゲンには、老化現象を遅延させる効果があることが、以前より知られており、近年になり新たに様々な研究がなされています。加齢とともに、エストロゲンが減少することで、更年期障害、骨粗鬆症、高脂血症、動脈硬化などの、様々な老年疾患が発生すること報告されており、最近ではエストロゲンの脳へ働きが徐々に解明されるにつれ、アルツハイマー病を始めとしたある種の痴呆症についても、このホルモンの低下と関係があることがはっきりしてきています。閉経後の女性では、エストロゲンの欠乏は一層促進され、更年期障害のみならず、皮膚の萎縮、成功障害、うつ病等を合併することもあり、動脈硬化や骨粗鬆症、老年痴呆等の症状をさらに悪化させる可能性があります。
加齢による卵巣の内分泌機能のため起こる、こういった様々な退行性変化に対し、女性ホルモンを外部より持続的に補充する治療法がエストロゲン・プロゲステロン補充療法です。
エストロゲンのホルモン補充療法については、欧米では既に20年以上の歴史があり、普及率も30%を超えていて、こういったホルモン補充療法を受けることが、むしろ常識となっている感があります。しかしながら、日本国内での歴史は浅く、開始より10年が経過したのみであり、普及率も2%程度です。これは、わが国ではホルモン補充療法を行う施設が、通常、婦人科に限られていることが多く、一般のクリニックではなかなか行われていないということが原因としてあげられるしょう。しかしながら、これらホルモン補充療法は、単なる更年期障害の治療にとどまらず、近年、骨、血管、脳などに対する様々な効果が期待されています。加齢に伴う疾患の全般的予防及び治療の手段として有効性が確立されつつあり、婦人科領域に限らず、様々な分野で注目されているのも事実です。
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